海外製品のドキュメントを翻訳するときに気をつけたいこと

こんにちは!今回は、製品ドキュメントの翻訳に関するお話です。
最近では、海外のソフトウェアプロダクトやITサービスなどのプロダクトを使用する機会が多いですよね。
そうなると気になるのが、取扱説明書などのローカライズ(日本語化/英語化)です。

「Google翻訳を使えばいいじゃん!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに機械翻訳は、翻訳の質自体は以前と比べると劇的に向上していますし、人間が訳してるんじゃないかと思うほど、自然な文章を生成するようになっています。

しかし、まだまだ機械翻訳をそのまま使用できるレベルには達していないというのが正直な感想です。

ユーザーが取扱説明書を読み間違えて、使用方法を間違えると、財産や人体に損害が発生してしまう場合があります。
そのため、ユーザーが理解しやすく、また読み間違いをするリスクも最小限にする必要があります。

ましてや、ソフトウェアプロダクトやITサービスなどの仕様書、チュートリアルなどは、そのプロダクトを使用した製品の品質に関わってきます。

実際、IT翻訳の現場では、機械翻訳で処理した訳文を、人間が読みやすい文章にする「ポストエディット」(PE)という作業があります。
用語や言い回しを統一して、翻訳すべき用語やそうでない用語を切り分け、文章構成を再構築するなど、機械翻訳では手が回らない部分に手を入れています。

ユーザーが理解しやすく、誤解されにくいドキュメントを作成するスキルを「テクニカルライティング」と呼びます。
今回は、このテクニカルライティングのスキルを応用して、理解しやすいドキュメントを翻訳するたのTipsをいくつかご紹介します。

ユーザーを理解する

まずは、ドキュメントをどのような人が読むのかを意識することが大切です。

読む人が、そのプロダクトに初めて触れるユーザーであるなら、解説もなしに専門用語を多用してしまうと、読み手を混乱させてしまいます。
逆に、プロダクトに普段から慣れ親しんでいるユーザーが読むドキュメントならば、適切な専門用語を使った方が、理解が早いです。

 

簡潔な文章にする

文章はできるだけ簡潔にしましょう。
人間が一時的に頭にいれておける情報の量には、限りがあります。

余分な言い回しを削り、箇条書きを適切に使って、情報が頭に入りやすくします。

翻訳するときに、原文でひとつの文が長すぎると感じた場合は、二つや三つに区切るのも手です。

 

冗長になるのを恐れない、略さない、文脈に期待しない

文章を簡潔にするのは大事ですが、書くべき情報、訳すべき情報はきちんと載せましょう。
冗長な文章になってしまうのを恐れすぎて、「文脈上、これは書かなくても分かるだろう」と省略しすぎないように気を付けます。

例えば、必要な主語を省いてしまう場合ですね。
長い文章を書いているうち、いつのまにか主語が変わっていることは、よくあります。
ここで原文を書く人が主語を省いてしまうと、主語が変わっていることに翻訳者が気づかないかもしれません。結果、誤訳が発生してしまいます。

翻訳しているときに省略された主語を見つけたら、不自然にならない程度に、訳文には主語を追加してあげましょう。

用語を適切に扱う

技術文書では多くの用語を使用します。ドキュメントを正しく理解してもらうには、用語を正しく扱う必要があります。
具体的には、次のことに気を付けるとよいでしょう。

  • 用語を統一する
    同じことを表している場合は、常に同じ用語を使います。
    同じものを指しているのに違う用語を使ってしまうと、読み手が混乱します。
  • 用語集を用意する
    用語集を作成して、用語の統一に役立てます。
    また、用語集をドキュメントの一部として掲載すれば、読み手が用語を理解するのに役立ちます。
  • 括弧や文字装飾を適切に使う
    画面上の文字列やUIオブジェクト、製品名などには、カテゴリごとに異なる文字装飾(ボールドなど)を使うか、括弧をつけます。
    例えば、[Start]や「スタート」などのようにします。

これにより読み手は、括弧でくくられた用語が、何か特別な意味を持つことを認識できます。
また、その用語にどのように反応して良いのかが分かります。

例えば同じ「Windows」という用語でも、それがOSの名称を表すのか、外を見るための窓なのか、それとも画面に表示されているボタンなのか、適切に文字を装飾することで迷わなくなります。

リズムを意識する

最後に、文章のリズムも少し意識してみてください。

取扱説明書や仕様書は技術文書ですから、文章の響きで読み手を楽しませる必要はありません。
しかし「読みにくい」とユーザーが抵抗を感じるような文章では、情報を正確に伝えるという技術文書の目的を果たせません。

原文を書く時も、翻訳をするときも、可能な範囲で構わないので、文章のリズムを意識した、読みやすい文章を心がけてください。

具体的には、次のようにするとよいと思います。
句読点(「、」や「。」)、ピリオドやカンマを適切に使う
読点が1つもない文章は、それだけで読む意欲を削いでしまいます。
読点を適切に打つことで、情報をある程度のまとまりで区切ることができ、読み手も理解しやすくなります。
日本語の場合、文字種を適切に混ぜる
ひらがな、カタカナ、漢字など、同じ文字種が続くと、リズムが悪くなり、理解がしにくくなります。
漢字が続くと堅苦しい印象になります。ひらがなばかり続くのも読みにくいです。

まとめ

分かりやすい技術文書を書き、翻訳するテクニックには、他にも色々あります。
しかし一番大事なのは、基本的ではありますが「常に相手のことを考える」ことです。

原文を書くときには、翻訳しやすいドキュメントになっているかどうか。
翻訳するときには、読んだ人が正確に理解できる訳文になっているかどうか。

一度、こういった視点からドキュメントを見直してみてはいかがでしょうか。

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