現場でのソフトウェア コピー利用の現実
ソフトウェア業界に於いて、様々な利用者からの申し出があるが、その中でも、時折出てくるやっかいな話を披露しよう。この話は、今から15年ほど前にとある企業からの相談である。
ソフトウェア販売会社よりコピー対策の依頼
ソフトウェアを販売している企業様より、「弊社のコピー製品が市場に出ている。対策方法を考えて欲しい」という物だった。当時の対策としては、今でも良く使われている、シリアルキーと呼ばれる、利用可能なコードを入力する事により、利用許可を行う物が一般的な対策方法だった。この方法を用いた場合、対策方法としては次の方法に別れる。
- 入力されたキーを用いるが、何らかのアクティベーションを行わずに、利用可能とする物。
- 入力されたキーを何らかの形で、アクティベーションを行い、アクティベーションを行った際に、許可情報を与え、利用可能とする物。
主に、この2種類の方法で利用可能にする物が大半であった。一般的に、流通するソフトウェアの場合、このシリアルキーの漏えいが最も損害を与える問題で有る。極端な言い方では有るが、ソフトウェアがどれだけコピーされようとも、シリアルキーさえ、漏えいしなければ、損害は微々たる物と考えても問題が無い。
アクティベーション回避情報が出回っているのでは?
今回、お客様より頂いた情報は、このアクティベーション型のシリアルキーを用いているが、どうやら、そのアクティベーションを回避する方法が出回っているのではないか?というものであった。
今回、こうした依頼が有ったため、このソフトウェアに関する俗に言う、「アンダーグラウンド」情報を確認し、どういった形態でコピーが行われているかを調査した。
調査して分かった回避方法
その結果、次の方法が出回っていることがわかった。
ソフトウェアは、販売元よりダウンロードが可能。この際、体験版としてファイルを入手している。アクティベーションに関わるシリアルキーは、別途アンダーグラウンドにて流通しているソフトウェアを用いて、都度そのたびに生成。生成されたシリアルキーを、体験版として入手したソフトウェアに入力し、正規ライセンスとして登録していた。
そのため、ソフトウェア会社に次の方法を試して貰った。
調査方法
ユーザー側の視点
- 体験版のダウンロードには、存在するメールアドレスの登録が必要。
- 1で入力したメールアドレスに、ダウンロード先を記載する。
- 2に記載されたダウンロード情報を元にユーザーはファイルをダウンロードする。
- ダウンロードしたファイルをインストールし、利用を開始する。
- 体験版を利用開始当初から、「機能制限版」と表示する。
- 体験版はアップデートが出来ず、30日で終了する。
- 利用機能無制限版(製品)を利用する場合は、体験版のメニューに有る「製品版はこちら」をクリックし、専用ページを表示する。
- 製品版を購入する際、アクティベーションセンターにて購入する。
ソフトウェア会社の視点
- 体験版にシリアルキーを入力して製品版に変更できないよう、重要な機能をDLLとして外出しし、体験版にはそのDLLを組み込まないようにする。
- 体験版を申し出た際に、入力されたメールアドレスと、体験版に書き込まれた特定情報を紐付けて、データベースに格納する。
- 体験版を無理矢理、製品版に変更した場合、書き込まれた特定情報とDLLに書き込まれた特定情報の一致を確認し、体験版起動時に確認するようにする。
- 体験版の起動時に、延べ120通り以上のデータマッチを行い、改ざんチェックを行う。
- 体験版稼働時に、Dの情報を元に、ソフトウェア側のアクティベーションセンターと通信し、正常な値であるかを常に確認する。
- 15分に1度、チェック機能をアクティベーションセンターからダウンロードを行い、チェック機能を変更する。
- アクティベーションセンターにて、特定情報のホワイトリストチェックを行い、前回の判断結果と大きく異なる場合は、データの読み込みのみを許可し、それ以外の全ての機能を無効化し、電話にて確認するように画面で通知する。
- 電話にて申告内容が許可内容と一致した場合のみ、再度データベースに情報を書き込み、再アクティベーションを許可する。
以上の助言及び仕組みを提供し、当座の対応とした。
結果
当面のところ、上記の内容で多くの知的財産が守られ、売り上げ向上も確認された。上記対応のうち、Fのアクティベーションに必要な情報のダウンロードには、機能の改善が含まれており、ユーザーの知らないところで、バグフィックスが行われている。
結果、インストール直後と1年後のファイルサイズは、大きく異なっており、内容が都度変更されるため、違法なコピー製品が出ても、すぐに使えなくなるといった、予備的な対策にも繋がった。
後に、この対策が別の問題を引き起こすことになるのだが、それは次回改めて問題点とその対策について書いていこう。
追記:
この度、外部ライターとしてコラムを書かせて頂きます。社長のカトーの知人でナビプラス株式会社の片山と申します。
普段は、お客様から寄せられる、新たなマルウェアの解析を行ったり、各種脆弱性に伴う調査及びその再現性について、日々追求する仕事をしております。今後とも、よろしくお願いします。