個人で使用しているSynologyのNAS DS918+が故障しました。
復旧するまで何を行ったかお伝えします。
当然ですが、メーカーが推奨方法は新しいNASを用意してマイクレーションを行う事になりますので遊びとして見ていただければと思います。
接続消失のメールが届いた。
NASの接続が消失したという通知が届いていたので、家のインターネット回線(UQWiMAX)が切れたのかなと簡単に思っていましたが、数時間経ち出先から接続しようとしたところ応答がありません。
その日はちょうど外出で翌日まで戻れない状況で現地で何が起こっているのかわからず、できると事から確認しています。
外部からの検証
WiMaxの回線が切れているのかチェックする為、家に設置してある防犯カメラにアクセスしてみましたが問題なくアクセスする事ができ、回線の問題ではない事を確認。
その後防犯カメラをNAS側に向けてみると該当のNASのみ電源ランプが点いていません。
外部からWOLで電源投入を試してみても応答なし電源消失している事が確定しました。
もう嫌な予感しかしません。
実機検証
家に戻り実機の確認を行ったところ、電源ボタンを押すと数回青いランプが点滅するが回数は決まっていない。(1回点くだけだったり3回点滅してみたり)そして電源が切れる。
電源ボタンのランプ以外はすべて消灯している。
FANは一瞬ピクリとするが回らない。
ACアダプターのインジケーターランプは点灯している。
とりあえず、電源ボタンを押すとランプは光るので電気は来ているようです。
分解開始
お約束ですが、分解が原因で何が起こるか分かりません。自己責任で行ってください。
今回のNASはメーカー保証期間が終了しておりメーカー修理は不能の為、自分で何とかするしかありませんので私は分解することにしました。
Synologyはネジの種類も少ないので分解するのは簡単です。
(DS918+はIFIXITで分解方法が説明されています。https://www.ifixit.com/Device/Synology_DiskStation_918?srsltid=AfmBOoqbN53aICwZr4BJ6NhnC_7K2eIhFOuw6k-3VdJxUz-ORU-4ZlyY)
上記手順で分解できますが、手を抜いてM.2ソケットのふたを外さないと引っかかって上手くガワが外れないので注意してください。
埃も溜まっていると思いますのでエアブロー(缶のもの)で清掃します。(コンプレッサーのエアガンでもよいですが圧が強すぎて実装パーツ吹っ飛ぶ事があるのでその場合は優しく吹きます。)
基板の確認
基板の匂いを嗅ぎます。
特に匂いを感じないので実装パーツが焼けてしまったという事はなさそうです。
電源コネクタあたりから、基板を眺めハンダが溶けパーツがずれたりしている箇所がないかチェックをしました。
基板は見た感じ問題ないようです。
ACアダプタの確認
基板に問題がなく、一瞬電源は入るのでACアダプターをチェックします。
DS918+のACアダプターのコネクタは4Pin、凹側の2Pinがプラス、残りの2ピンがGNDです。
基板にACアダプターとFANのみを接続し電源を入れてみるとONにした瞬間、ACアダプターのランプが暗くなる事に気づきました。
12Vは出ていますがACアダプターに問題があるようです。
ACアダプター交換
付属しているACアダプターと同じ物、Synologyのホームページにスペアパーツとして記載されているのですがなぜか国内代理店では取り扱いが無いようで店舗で手に入れる事ができませんでした。
店舗では売っていませんがAmazonを見るとsynologyストアが販売しています。¥14,500となかなかのお値段します。
今回は治るかわかないので手持ちのACアダプターを4Pinに変換するアダプタ(安い)を使用します。
ACアダプター交換後、ハードディスクは接続せず、メモリーだけ取りけてある状態で起動。
電源ランプが点滅し、FANが回転しました。
これは治ったか?と思いましたが正常起動のビープ音は鳴らず。
電源が入るようになり少し進みましたが復旧ならず。
Serial接続で起動しているのか確認してみる。
Synologyはメインボード上にSerial端子があり、起動状況を確認する事ができます。
Serial接続にはWaveShareのPL2303 USB UART Board (type A) V2を使用しました。
接続は以下のようになります。接続するのは2番4番6番のみになります。
TX、RXはクロス(TX-RX)するように接続します。
システムボードはメモリーだけ取り付けし電源ケーブルを接続、電源を入れた状態でTeratermやPuttyの標準設定からスピードだけ115200に変更すると受信できます。(おっさんなら115200ボーで通じるはず。)
今回受信時の画面のスクリーンショットを取り忘れてしまったのですが「Memory training fail, In a Dead Loop: Acting Dead!」というメッセージが繰り返し表示されている状態でした。
やはり何かおかしいです。
BIOS情報の破損を疑ってみる。
CMOSのボタン電池を取り外し放置して状況が変わらないことを確認。
BIOSの内容を確認していく事にしました。
なお、この作業は結果としてうまくいきましたが途中経過が全く予定通りに進まなかった為、途中確認の情報が不足しています。
BIOSが書き込まれているフラッシュメモリチップはWinbond 25Q128FWSQでした。
ROMの確認にはAmazonなどで売っているCH341A搭載のライターを用意、25Q128FWSQは1.8V動作なので降圧する必要があり、降圧アダプタも用意しました。
リードライトに使用するソフトはライターの販売元からダウンロードしたCh341 programmerを使用しました。
BIOSのバックアップ
BIOSデータをバックアップ(read)しようとしましたが失敗。
進捗ゲージは進みライター上のリードLEDも点滅していますが画面情報はFFのままでデータは表示されませんでした。
何度行っても状況が変わらないので諦めました。
BIOSの消去
BIOSの消去は正常終了しました。
(画面上のデータはFFですがこれも本当に消去されたのかはわかりませんでした。)
BIOSファイルの書き込み
書き込むBIOSのデータを用意する必要があります。
BIOSファイルはSynologyサイトからダウンロードできるファームウェアファイル内に含まれていますが加工が必要です。
今回はDSM_DS918+_42218.patというファイルを使用します。(Synologyのダウンロードページからダウンロードできます。)
(42218よりも新しい物がありますが暗号化されているのか解凍できないので古い物を使用しています。)
7zipで解凍し、bios.binを探します。
bios.binの中には直接書き込むには不要な部分が含まれているのでバイナリエディタで不要な部分を削除する必要があります。
Stirlingなどのバイナリエディタでbios.binを開き必要な部分のみをコピーし新しいファイルを作成します。
DSM_DS918+_42218.patから取り出したbios.binの中で必要となるのは000AD1D0~008AD1CFの部分でした。
作成したファイルをCh341 programmerで開き、書き込みを行います。
(成功した判断は最終的に起動できたからでチップ事態のリード、ベリファイは成功しませんでした。)
とりあえず書き込みが成功した事はわかりませんが電源を入れて起動してみます。
電源を入れて起動確認を行う。
シリアル接続を行った状態で電源を入れ、いつも通りの電源ランプ点滅を確認、それから3分ほど待った後ビープ音がなり起動しました。(以下が起動時に表示された情報。)
その後、通常起動する事を確認しました。
復旧完了
ライターの動作に問題がありましたが無事復旧する事ができました。
NASには重要なデータを保存する事になりますので一度壊れたDS918+は安心して利用する事はできません。
今後はテストや消えても影響のないテンポラリファイルや編集が終わった後の動画などの保存先として使用する予定です。
また、ご存知ない方が多いのですがSynology製品の保証期間と修理については注意が必要です。
国内の家電やパソコンなどの感覚であれば保証期間外に故障しても有償修理なら行えると考えると思いますが、Synology製品は保証期間終了=修理対応期間終了となり有償修理がありません。
法人利用の場合サーバーなどと同じで5年間利用される予定で購入を検討される場合がありますが保証期間後壊れた場合は買いなおしになりますので経理処理的に困る事になる場合は導入時に同一機種を2台導入しHigh Availability 機能などによる冗長化など故障時に備える必要があります。
弊社ではSynology、QNAPの導入、現環境からの移行など全般的にサポートしております。なにかございましたらお気軽にお問い合わせください。
なお、この記事に対する詳細説明などお問い合わせについては受け付けておりません。
予めご了承ください。